京都北白川の現場は梅棹忠夫氏の家をギャラリーとカフェと茶室にする改築です。
少ない予算でも優先順位をつけてできることからはじめました。
2階の住居、1階のギャラリー、カフェ、茶室の機能を満たすこと。
築100年近い建物の耐震化と断熱化を優先すること。
増築を重ねてできた複雑な屋根形状を単純な形状にすること。
改築は内装外装をきれいにすることだけではありません。
優先順位をつけないとあれもこれもと予算を考えずにふくれるものです。
梅棹忠夫氏の家の痕跡や当時の知的な雰囲気が残るようにデザインしていきました。
建主の梅棹マヤオ氏の要望は「シンプルなデザイン、あらゆる方面の芸術家や学者たちが集う場所を提供したい。」
建物自体の歴史的な価値より、中庭を囲う本棚を設えた廊下や造り付け家具など、梅棹忠夫の豊かなアイデアが満載された部分をあえて残して、デザインの中枢にしました。
お父さまの代から入っていた職人さんの息子さんに工事を依頼し、設計監理は息子の渓が担当しました。
壁仕上や塗装などはセルフビルド、外構は京大建築科学生たちのワークショップでおこないました。
ギャラリー玄関ドアの塗りかえは安田滋です。
オープンぎりぎりまで工事していますが、たぶん未完成のままのところが多いと思います。
完成して終わりではなく、ずっとつくり続ける家なのです。