はじめに

生活の実践と設計

安田滋アトリエでは,安田滋自身が冬にはマイナス15度にもなる標高1100mの嬬恋村に身を置き,設備の実験や生活の仕方を思考錯誤し,そしてなによりも自分自身で里山,高原での暮らしを楽しむことで,つかうことと考えることとを密接させながら設計の実践をしています。

建築家自ら巻きストーブによる暖房・調理,田畑の耕作を実践する

建築家自ら薪ストーブによる暖房・調理,田畑の耕作を実践

つかう,つくる,考える

そもそも,かつてモノをつくる人とつかう人は同じでした。
時代が下るに従って,まずつかう人(生活者=施主)とつくる人(生産者=大工)に分化し,さらにつくる人と考える人(設計者)がそれぞれの専門に分離しました。これによりそれぞれ専門分野に特化した分業が可能になった一方で,生活の実態が設計に反映されないなど多少の問題もおきています。

それに対して,生活・生産・設計がそこまで分化していなかった時代に時間をかけて生み出されたデザインは,美しく同時に合理的です。

嬬恋三原のせがい造り(出し桁造り)の民家。

嬬恋三原のせがい造り(出し桁造り)の民家

例えば,嬬恋の伝統的な民家には出し桁造り(せがい造り)という様式がよく見られます。その目的は雨・雪のふる時の作業性,街道沿いの宿場でお客さんを濡らさないための雨よけ,養蚕の面積の確保といったものが考えられます。伝統によって生まれたデザインはあるときにぱっと出たものではなく,風雪と長年の知恵で淘汰洗練されて生み出されたもので,ときに大いにインスピレーションを与えてくれます。

安田滋アトリエは,時節や場所で多様に繊細に,ときに過酷に変化する自然環境における建築設計ではとくに,それがつくられ,つかわれる現場,風土を熟知しているべきだと考えています。

都会と自然

安田滋は海に近い小田原に生まれ,東京渋谷に育ちながら,東京を拠点として全国各地で建築設計活動を行ってきています。

2000年頃から東京と嬬恋でのマルチハビテーション(複数地居住)を開始し,今では嬬恋で過ごす割合が多くなっていますが,都市環境と自然環境のメリット・デメリットを熟知しており,広い視野で住まい方のアドバイスが可能です。

GHQ(ゴーヤ・ヘチマ・キュウリ)によるみどりのカーテンは,都市環境への里山環境を挿入する。

GHQ(ゴーヤ・ヘチマ・キュウリ)による緑のカーテンは,都市環境への里山環境を挿入します

現場とのコミュニティ

また,地域の若い職人・大工と丁寧な仕事を重ねて,いい建築をつくるために必要なコミュニティを構築しようとしています。

出し桁

若い棟梁・職人たちとチームを組み,お互い信頼し成長できる環境をつくる。
生産と設計のコラボレーション

 

生活の発信

このように,つかうこと(住まう)・つくること(生産する)・考えること(設計する)を行き来することによって,そこの風土に根ざし,長年の設計経験と自身で実験・実践した,確かな技術を用いた建築設計が可能です。

そして,安田滋アトリエは設計だけでなく生活行為,生産行為も含めて,ブログやFacebookを通じてみなさまに発信することが肝要だと考えております。

また嬬恋のアトリエへお越しくだされば,生活風景を実際にご覧になっていただけます。ちかくの安田滋の設計した作品にご案内することも可能です。お気軽におたずねください。

2015年吉日 安田滋